桑島由一「大沢さんに好かれたい。」 感想

 大地守はある日偶然ヒーローになってしまった。どこからか突然やってくる怪獣の退治に奔走するうち、地味だった彼は学校中の人気者に。学園のアイドルも彼に夢中になるが、一方の大地は徐々に開いていく大沢さんとの距離に思いは複雑・・・。という話。
 この著者の作品は初めて読みましたが、かなり面白いです。前半は主人公の大地がヒーローとして活躍し人気者になる過程を二人の女の子を絡めながら明るく描いています。明け透けな言い方をすれば萌えとドタバタ。ヒーローオタクの学園のアイドル・飛鳥はひたすらかわいい(笑)。ただ、大地と大沢さんの微妙な関係性は丁寧に書かれています。話は徐々にヒーローの苦悩や「糾弾される主人公」というやや重い話に移っていくのですが、大沢さんの優しさが物語を救っています。
 設定や人物の掘り下げにあまり深みが足りないと感じる部分もあるのですが、文句なしにストーリーは面白いですし、話の運び方も上手い。正直かなり引き込まれた。始め寝転がりながら読んでたのですが後半はちゃんとイスに座って読んでました(笑)。かなりオススメの一冊。

<以下ネタバレ注意>
自分的には良かったんですが、ラストに結構不満のある人がいるみたいですね。大沢さんがいなくなってしまう展開もありだとは思いますし、作品としての完成度も高まるとは思いますがかわいそ過ぎるので(笑)。そういえば、「ポケットの中の戦争」ノベライズの終わり方をちょっと思い出しました。
クライマックス近くの大沢さんの日記を読むところは結構やばかった・・。