新城カズマ 「サマー/タイム/トラベラー 1」 感想 

 まだ物語が完結していないので(2巻は来月に刊行)総評は書けない訳ですが、とりあえず印象まで。正直かなり好きです。キャラクターや世界観が良かったので。
 好き嫌いは結構はっきり分かれそうな気もします。本筋はある女の子の不思議な能力を主人公を含む仲間5人で解明しようという割りと分かりやすい一本道なのですが、様々なSF小説や映画の分類・考察を試みたり(ほとんど読んでないよ・・)物語の舞台となる地方都市の市長と公共工事を巡る話が出てきたりと、あちこちに脇道があります。読んでて吉里吉里人を思い出しました(笑)。いや全然違うんですけど。まずそういうのを鬱陶しいと感じる人はダメかも。個人的には小林泰三の「酔歩する男」(「玩具修理者」収録)が出てきたりしてうれしかったですけどね。約二年前から執筆していたということで9・11に関してあれこれ考えるシーンなんてのもあります。
 ちょっと気になったのは「〜になるとは思わなかった」とか「気付いていなかった」という部分が結構多くて、それは作中でも指摘しているようにタイトラベル作品に付き物の「悔恨」を描こうということかもしれませんが、こちらとしては「そんなに伏線張って大丈夫か?」と心配になったりもします(笑)。
 いずれにしても2巻が楽しみ。情報量が結構多いので時系列順に出来事を整理したりすると良いかも。