川原泉「バビロンまで何マイル?」

 だいぶ以前の作品ですが今回初めて読んであまりに面白かったので感想を。
川原泉の作品で読んだのは笑う大天使フロイト1/2についで3作目。(これもめちゃくちゃ面白い)
 幼なじみの高校生二人が妖精にもらった指輪の力でタイムトラベルをするというストーリー。メインとなるのは15世紀末ルネサンス期のイタリアでの話。主人公二人がイタリア統一の野望を抱くチェーザレ・ボルジアや妹のルクレツィアらと出会い様々な歴史的事件を目撃していくわけですが、このチェーザレの描き方が実に上手いと思う。冷酷な権力者が実は孤独や不安を抱えてましたよという話はたくさんありますが、この作品ではチェーザレの内面的描写を極力避けることでむしろそういった部分を滲み出させるような描写をしています。(あー、上手く伝えられない・・)これが物語りに深みを与え後半につながっていくのですがあまり書くとネタバレなのでこの辺で。
 あと面白い部分は主人公たちがとても賢くてローマで仕事に就いて、なおかつ作品内の解説役も担ってしまうところですね。川原作品の登場人物はいろいろ考え悩むけれでも結局物事に対してはポジティブに向かっていくという姿勢が自分としては好感が持てます。
 歴史を題材にした読み物としてもとても面白いので未読の人はぜひ手にとって欲しいなぁと思います。残念なのは結局白亜紀編とルネサンス編で終わってしまった事ですね。続編は無いのかな。塩野七生の本もよんでみようと思います。