『王立宇宙軍』鑑賞メモ
The change from night to day is really only hours
It's just along the line can't you see the sign
When I looked around, Iwas heading down,
Won't somebody throw me down a line.
(夜が朝になるのもただの時の変化
人生の沿革なだけなのがわからないのかい
気が付いたら僕は落ちかけている
誰か僕にロープを投げ下ろしてくれ)
TIGHTROPE/E.L.O
Written by Jeff Lynne(訳:Y.Higuchi?)※正確な記述なし
アニメ夜話の後に(ってもう一月前だけど)もう一回あらためて観た。半年前くらいに初めて観たときは,打ち上げの前後以外は結構地味だなという印象で,これはやっぱりシロツグや仲間たちが持っている人生の諦念・諦観が背景にあるんだろうけど、何度か見てるとこの緩さが心地良くとまでは言わないが分かるような気になるのが不思議。伝説となっている打ち上げシーンですが、これはやはり凄い。技術的な事は分からないけど、感じる画とでも言おうか。押井守が庵野秀明の「アニメファンはセル絵へのフェティッシュが云々」とか何とかという言葉に言及してるのを目にしたけど、確かにそういうのはあるかも知れない。作品のテーマは全てシロツグを追っかけていけばいいのだと思うけど、他の2つの要素が気になる。
- a.リイクニ
物語の起点は怠惰に過ごしていた男が女の言葉をきっかけに使命感に目覚めるというオタク作品にちょっとありきたりに過ぎるものなんだけど、『王立』はちょっと様子が違う。こういう構図を持つ作品では、その2人が「男女」として物語内に収まるのが普通であって、女は常に男を見守り励ます義務を負う。(『タッチ』でも『スラムダンク』でも)しかし、シロツグはともかくリイクニの方はシロツグを男として意識するという場面がほとんど無く、基本的には放ったらかし。母性のようなものは確かにあるが、それは熱心な宗教家という設定の故のような気もする。「宇宙に連れてって」とか気の利いたことが言えないんだろうか(笑)。
一方シロツグも本当に「本気」になったように見えるのも映画の終盤で、それまでは彼女の生活苦を知りながら何もしてやれない相変わらずな感じである。アニメ夜話の中で「シロツグとリイクニのすれ違いがリアル」という話があったけど、リイクニというヒロイン像とこの2人のすれ違いは、地球を眼下にしたシロツグが語る言葉を持たなかったことと並んで、『王立』の大きな裏テーマのひとつだ。
エヴァ18話『命の選択を』(脚本:樋口真嗣 庵野秀明)より
彼女、というのは遥か彼方の女と書く。女性は向こう岸の存在だよ、我々にとってはね。
- b.歴史
シロツグと教官の会話や、宇宙に上がったシロツグの眼前に広がる人類史を俯瞰するようなイメージなどからして、もう一つのテーマとして宇宙SFの決まりごとっぽいけどやはり「歴史」が浮かび上がってくる。個人の領域で言うと、大げさですが「歴史」の中に自分をどう位置付けるか、自分の中ではこれがこの映画の一応のメインテーマになっている。これは『王立』が公開されて約20年たった現在でも訴えるものがあるのではないか。歴史の中に〜などという事はただのロマンでしかないのだが、なかなか切実な思いのような気がしないでもない。
熱い血が流れてる ちょっと見じゃ わからないけど
人生はバランスで
何かを勝ち得て 何かを失ってく
それでも 未来を担うかけらでも
男としたら狙ってるFRIENDSHIP/H jungle with t
WRITTEN BY TETSUYA KOMURO
もの凄い恥ずかしい話だけど、こういうのはちょっとだけ信じてる部分がある。それにしても懐かしい曲・・。
無理やりまとめると、オタク(山賀博之は違うかもしれないけど)が自分たちの不毛さと戦うというか、そういう微妙な綱渡りを経て物語を語ることのできた奇跡みたいな作品ではないかと思う。もうちょっと年取ってから見たら、もっと沁みてくるような気がする(笑)。
DVD廉価版出ないかなぁ。