本田透「電波大戦」

か〜ずSPさんで「二次元オタクの恋愛思想として指針となりうる啓蒙書」とあってこれはさすがに抑えとくかと思い読んだ。そういえば、バイト先の前の店長も強く推してなぁ(笑)。
多くの人が指摘しているので今更ですが、まじめに読むと「恋愛なんかしなくても、2次元がいればいいじゃん」という少なくないオタクがぼんやり考えていた事を活字にして出版したところに大きな意義があるような気はします。岡田斗司夫が語らなかった「オタクと恋愛」に真正面からぶつかってる様は結構好感持ってるんですが、竹熊の言うように広く支持が広まってるかはどうかよく分からん。

前著「電波男」を読んでいないので本田透の基本スタンスに関しては全部掴んではいないですが、本書においては

1.恋愛至上主義恋愛資本主義)への批判→純愛を求め2次元の世界へ
2.オタククリエイターがモテの魔の手に落ちると創作力が枯渇する

主にこの2点を中心に各氏との対論が進みます。
特に2番目に関しては著者自身が相当心配しているのか庵野秀明の名を挙げて度々指摘しています。創作力や才能の根拠をなんでもかんでもトラウマやルサンチマンに求めるのは好きではないんですが、この点に絞った論考なんかは読んでみたい気がしないでもない。

読んで面白いのは竹熊健太郎との対談ですが、インパクトが一番凄いのはやっぱり倉田英之

でも、僕はもう本当、恋愛には興味がない。
女性というのはもう印刷物かデータで十分だろうと。言ってしまえば紙かjpgで十分だ。

これはもうある種達観ですね(笑)。本田透の場合本書の中でも「損失補填してくれるんなら恋愛の株買っても良い」「理想の3次元がいない」など微妙な揺れを感じるところがあってそこが面白かったり共感するところなんだけど、「jpgで十分」という所まで行ってしまうともう新しい発想とか表現と言うのは出てこないんじゃないかと思っちゃうんですけどね。まあ「R.O.D」は自分も好きなんですけど。

まあ、そんな感じで自分はオタクだなぁと自覚していてまだ未読の人はとりあえず一読してみては?筑摩新書から刊行の次作も結構注目か。
関係ないけど、荒俣宏のエピソーがド面白い。岡田斗司夫唐沢俊一の対談(オタクの迷い道)で出てきたエピソードも笑えるし、荒俣は結構伝説の人なんだなぁ。